2027年施行「育成就労制度」——義務化する外国人労働者への日本語教育

2027年4月、外国人材の受入れ制度が大きく変わります。

これまで約30年にわたって運用されてきた 「技能実習制度」 が廃止され、新たに 「育成就労制度」 が施行されるのです。

この制度変更は、単なる名称変更ではありません。制度の目的そのもの が「国際貢献・技術移転」から 「人材の育成・確保」 へと転換されます。そして、その柱のひとつとして、企業による日本語教育の義務化 が明確に打ち出されています。

現在、日本で働く外国人労働者は 約257万人(厚生労働省、令和7年10月末時点)。外国人を雇用する事業所も 37万所超 と、いずれも過去最多を更新し続けています。

本コラムでは、育成就労制度の全体像を整理したうえで、企業が具体的に 何を・いつまでに・どう準備すべきか 、日本語教育コンテンツの作り方を中心に解説します。

1. 育成就労制度とは何か──技能実習との決定的な違い

1-1. 制度比較

まずは制度の変更点を、分かりやすく表にしました。現行法と比較してみてください。

項目技能実習制度(現行)育成就労制度(2027年〜)
制度の目的国際貢献・技術移転人材の育成・人手不足分野の人材確保
在留期間最長5年(段階的)原則3年(育成期間)
キャリアパス終了後は帰国が原則特定技能1号・2号へスムーズに移行可能
転籍(職場変更)原則不可一定条件で可能(制限期間1〜2年)
日本語要件(入国時)明確な要件なし(一部分野を除く)N5相当以上の合格、またはA1講習の受講
日本語教育の企業負担規定なし費用負担・学習機会の提供が義務
特定技能への移行試験免除ルートあり技能試験+日本語試験の合格が必須
監理団体監理団体監理支援機関(許可制に変更)

1-2. 制度変更の背景

技能実習制度は、「国際貢献」を目的としながらも、実態としては人手不足を補う労働力として運用されてきました。この建前と実態の乖離が、以下のような構造的問題を生んでいました。

  • 低賃金・長時間労働などの労働条件の問題
  • 転籍が原則禁止されているための不当な拘束
  • 失踪・不法就労の増加

育成就労制度は、こうした問題を正面から是正し、外国人材を「育成すべき人材」として位置づけ直す ことを意図しています。

1-3. 企業への影響──3つの重大ポイント

育成就労制度が企業に与える影響は多岐にわたりますが、特に重要なのは以下の3点です。

① 日本語教育が企業の義務になる 講習費用の負担、学習機会の提供が制度上の要件に

② 転籍が可能になる=人材の流出リスクが生まれる 教育体制の充実が、人材定着の競争力に直結

③ 特定技能への移行に試験合格が必須になる 「育成就労計画」に基づく計画的な教育が不可欠

2. 新制度の日本語要件──具体的に何が求められるのか

2-1. 段階別の日本語能力要件

育成就労制度では、外国人材の日本語能力について 段階的な要件 が設けられています。

段階要件備考
入国時JLPT N5相当(CEFR A1)以上の合格、またはA1相当の講習(100時間以上等)の受講入国前の学習が前提
就労中N4(CEFR A2)相当を目指した段階的な学習企業が学習機会と費用を提供する義務
特定技能1号への移行時日本語試験(N4相当以上)+技能試験に合格試験免除ルートは廃止

2-2. 企業に課せられる具体的な義務

制度上、受入れ企業(育成就労実施者)には以下が求められます。

  • 日本語講習の費用負担: A1・A2相当の講習にかかる費用は企業の負担
  • 学習機会の提供: 勤務時間内の学習時間確保、またはオンライン・対面での講習機会
  • 育成就労計画への明記: 日本語能力の向上目標・学習方法・スケジュールを具体的に記載
  • 体制の構築: 育成就労責任者・指導員・生活相談員の選任(養成講習の修了が必要)

つまり、「日本語教育は本人任せ」という運用は制度上認められなくなる のです。

2-3. 日本語教育に加えて求められる「文化・生活面」の教育

育成就労制度の教育義務は、日本語の文法や語彙にとどまりません。以下のような 文化・生活面の指導 も含まれています。

  • 日本の生活習慣・マナー
  • 社内ルール(就業規則、安全衛生、報連相など)
  • ハラスメント防止に関する教育
  • 地域社会との共生に関する基本知識

これらは、「一度教えて終わり」ではなく、継続的に学べる環境を整える必要があります。

3. 「やさしい日本語」を活用した社内ルールの浸透

先に述べた社内ルールやハラスメント教育では、「やさしい日本語」で作られた教材やビジュアル教材 を活用するのが効果的です。

3-1. なぜ「翻訳」だけでは不十分なのか

外国人社員への社内ルール伝達というと、「多言語翻訳すればよいのでは」と思われがちですが、実際にはいくつかの課題があります。

  • 対応言語の限界: ベトナム語(23.6%)、中国語(16.8%)、フィリピノ語(10.1%)をはじめ、出身国は多岐にわたり、すべてに対応するのは現実的でない
  • 翻訳コスト: 就業規則やマニュアルの改訂のたびに翻訳費用が発生
  • 文化的ギャップ: 制度やルールそのものの背景(なぜそのルールがあるのか)が伝わらない

3-2. 「やさしい日本語」の実践ルール

「やさしい日本語」は、こうした課題を解決する有力な手段です。国籍を問わず、日本語を学んだ外国人に共通して伝わるよう言葉を工夫する技法であり、厚生労働省もその活用を推進しています。

ルール
1文を短くする(一文一情報)×「出勤時間に遅刻しそうな場合は、必ず事前に上長へ連絡してください」→ ○「おくれるとき、じょうし に れんらく してください」
漢字にふりがなを振る就業規則(しゅうぎょうきそく)
専門用語を日常語に言い換える「記入」→「かく」、「氏名」→「なまえ」、「至急」→「すぐに」
理由をセットで伝える「タイムカードを押してください。会社があなたの仕事の時間を正しく知るためです」
二重否定を避ける×「行かないわけにはいかない」→ ○「行ってください」

3-3. 厚生労働省の公的ツールを出発点にする

ゼロから作る必要はありません。厚生労働省は以下の無料ツールを公開しており、社内ルール整備の出発点として活用できます。

ツール名内容
モデル就業規則 やさしい日本語版就業規則の主要項目をやさしい日本語で記述
雇用管理に役立つ多言語用語集人事・労務の頻出用語をやさしい日本語+多言語で解説
外国人社員と働く職場のポイント・例文集場面別の説明例と文化ギャップ対応ガイド

出典:外国人の方に人事・労務を説明する際にお困りではないですか?(厚生労働省ホームページ)   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page11.html

4. 自社専用の日本語学習コンテンツをつくる

4-1. なぜ「自社専用」が必要なのか

育成就労制度が求める日本語教育は、汎用的な日本語学習ではなく、業務に直結した実践的な日本語力の育成 です。市販教材では対応しきれない領域がたくさんあります。以下はその例です。

業界自社固有の日本語
製造業設備名称、作業手順の用語、安全確認の声かけ
介護利用者への声かけ表現、記録の書き方
小売・飲食接客フレーズ、クレーム対応、レジ操作の説明
建設現場用語、KY(危険予知)活動の表現

育成就労計画に「業務に必要な日本語スキルの習得」を盛り込む以上、その教育コンテンツも自社の業務に即したものであるべき です。

4-2. 効果的な教材設計の5つのポイント

業務に即した日本語スキルを習得するためには、教材を以下のような設計にすると効果的です。ポイントを5つご紹介します。

① 業務シーンから逆算してテーマを決める

「日本語を網羅的に教える」のではなく、「この業務ができるようになるために必要な日本語」 を特定する逆算型アプローチが有効です。

【設計例】
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業務シーン : 朝礼で体調不良を上司に報告する
必要な日本語 : 「すみません、今日は体調が悪いです」
                「病院に行きたいです」
学習ゴール  : 自分の体調を簡潔に報告し、対応を依頼できる
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② ビジュアル(写真・動画・イラスト)で言葉の壁を補う

  • 写真: 実際の職場・設備・作業手順
  • 動画: 正しい行動と誤った行動の比較(ビフォーアフター形式)
  • ピクトグラム: 文化や人種を特定しない普遍的なアイコン

③ 音声ナレーションで「聞いて覚える」を可能にする

日本語の読みに不慣れな学習者にとって、音声は理解を大幅に助けます。「聞く → 真似る → 覚える」のサイクルが最も効果的です。

④ 確認テスト(ドリル・クイズ)で理解度を可視化する

育成就労計画の中で 日本語能力の到達度を示す証拠 にもなります。

⑤ スマートフォン対応は必須

外国人社員の多くはPCよりスマートフォンを日常的に利用します。いつでも・どこでも学べるモバイル対応 は、学習の継続率を大きく左右します。

5. 転籍時代に「選ばれる企業」になるために

5-1. 転籍の柔軟化がもたらす競争環境

育成就労制度では、一定条件を満たせば外国人社員が 自らの意志で職場を変更(転籍) できるようになります。

条件内容
制限期間産業分野ごとに1年または2年
技能要件技能検定基礎級等の合格
日本語要件所定の日本語試験の合格
転籍先の要件同一産業分野で、優良な受入れ企業であること

これは、教育体制が整っていない企業から人材が流出する リスクと、教育が充実した企業に人材が集まる 機会の両方を意味します。

5-2. 教育コンテンツが「定着率」を左右する

外国人社員が「この会社で働き続けたい」と思う大きな要因のひとつが、「自分が成長できる環境があるか」 です。

  • 業務に即した日本語教材がある → 仕事への不安が減り、パフォーマンスが向上
  • 社内ルールが理解できる → トラブルが減り、人間関係が良好に
  • キャリアパスが見える(特定技能への移行支援) → 長期的な就労意欲が高まる

教育コンテンツの整備は、人材戦略そのもの です。 単に施行される法律があるから仕方なく対応する、というのでは、けして少なくない対応コストを割くのに、もったいないと思いませんか?

外国人雇用の転換点

育成就労制度の施行は、外国人雇用のあり方を根本から変える大きな転換点です。

この変化を 「面倒な制度対応」 と捉えるか、「外国人材から選ばれる企業になるチャンス」 と捉えるかで、今後の採用力・定着率に大きな差が生まれます。

そして、その鍵を握るのが 日本語教育コンテンツ です。

制度施行まで、あと1年を切りました。 企画から制作までに必要な期間を考えると、準備を始める「最後のタイミング」は、まさに今 です。

「何から始めればいいか分からない」 「育成就労計画にどんな教育プログラムを盛り込めばよいか知りたい」 「自社の業務に合った日本語教材を作りたい」

──そんなときは、ぜひ一度エレファンキューブにご相談ください。


株式会社エレファンキューブは、2008年の創業以来、企業研修用eラーニング・デジタル教材の企画制作に特化 してきた専門企業です。

育成就労制度対応の教材づくりを、企画段階からワンストップでご支援 します。

コンテンツ制作の目安

教材制作には通常3〜6ヶ月かかります。 2027年4月の施行に間に合わせるためには、2026年内に企画・制作に着手 することが必要です。

下記は育成就労制度の施行(2027年4月)から逆算した、制作スケジュールの一例です。
必要な期間は制作する内容によって変わりますが、制作をご検討されている場合は、ご参考いただけますと幸いです。

時期内容
Step12026年6月~• 現状把握:外国人社員の日本語レベル業務課題調査
・テーマ、ゴールの設定
Step22026年9月~コンテンツ設計・制作開始
Step32027年1月~テスト運用・修正
Step42027年3月~本運用開始
2027年4月育成就労制度施行開始

まずはお問い合わせ

「こんなものを作りたいが制作期間や費用はどのくらい?」
「どのような教材を用意すれば良いか分からなくて二の足を踏んでいる…」

など、些細なことでも構いません。ご相談は無料で承りますので、ぜひ一度ご相談ください。

最終更新日: 2026-06-16