eラーニング導入に使える助成金・補助金とは?

eラーニング導入に使える助成金・補助金とは

人材育成に対する投資の活性化や働き方改革などにより、eラーニングを導入する企業が増加しました。在宅勤務やテレワークの普及に伴い、社内の研修や教育をオンライン化する動きはさらに拡大しています。このような中、国や自治体がeラーニングの導入を支援する「補助金」や「助成金」の制度を拡充しました。
この記事では、eラーニングを対象とした補助金と助成金、eラーニングの活用についてご紹介します。

<目次>

補助金と助成金の違い

補助金とは、主に経済産業省や地方自治体が管轄しています。事業拡大や設備投資など、企業の事業をサポートすることが目的です。
助成金は、主に厚生労働省が管轄しています。雇用促進や職場改善など、労働者の職を安定させるための支援金という位置付けです。

補助金は予算や定員が設定されているため、申請しても受給できない場合があります。また、募集期間も限られているので早めの申請が必要です。申請数が多い場合にはコンペ形式となることもあります。一方、助成金は、給付条件を満たしていれば原則受給が可能です。一般に通年で公募していることが多いため、補助金と比べると受給しやすいと言えます。

人材開発支援助成金

厚生労働省の助成金である人材開発支援助成金は、企業が従業員に対して職業訓練などを実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。2022年4月から、eラーニングも助成対象となりました。なおeラーニングの場合、経費のみ助成対象です。人材開発支援助成金には7つのコースがあります。

① 人材育成支援コース
② 教育訓練休暇等付与コース
③ 人への投資促進コース
④ 事業展開等リスキング支援コース
⑤ 建設労働者認定訓練コース
⑥ 建設労働者技能実習コース
⑦ 障害者職業能力開発コース

この中で、eラーニングによる訓練が対象となるのは、① 人材育成支援コース、③ 人への投資促進コース、④ 事業展開等リスキング支援コースの3つです。それぞれのコースについて、以下で詳しくみていきます。

(1) 人材育成支援コース

人材育成支援コースでは、職務に関連した訓練、新入社員や管理職研修、非正規雇用者の正規雇用者転換のための訓練などが対象となります。主な訓練は3つです。

  • 人材育成訓練

職務に関連した知識・技能を習得させるため、OFF-JTにより行われる訓練。
※ OFF-JT(OFF the Job Training)とは、企業の事業活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる訓練のことです。

  • 認定実習併用職業訓練

OJTとOFF-JTを組み合わせて行われる、厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練。
主に新入社員を対象とし、中核人材を育てるために実施します。
※ OJT(On the Job Training)とは、適格な指導者の指導の下、企業内の事業活動の中で行われる実務を通じた訓練のことです。

  • 有期実習型訓練

有期契約労働者等の正社員転換を目的として実施する、OJTとOFF-JTを組み合わせて行われる訓練。

eラーニングの場合、経費助成率は最大70%、上限金額は15万円です。従業員の賃金を向上させた事業主に対しては、助成額が上乗せされます。
また、対面により実施される訓練とは支給要件が異なることに注意が必要です。特に、定額制のサブスクリプション型eラーニングは、1訓練あたりの経費が分からないため支給対象外となっています。訓練に使用するパソコンやソフトウェアなどにかかる経費についても、対象外となります。

参考:厚生労働省「令和6年度版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版」

(2) 人への投資促進コース

人への投資促進コースは、令和4年〜8年度の期間限定助成です。 訓練を受ける従業員の雇用形態に制限がないのが特徴で、正規・非正規(パート・アルバイトを含む)を問わず訓練を受けることができます。主な訓練は5つです。

  • 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材

DX推進や成長分野などにかかわる高度人材を育成するための訓練。
大学院での高度な訓練が必要で、海外の大学院での訓練も対象となります。
※ DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務プロセスなどを変革し、自社の競争力を高めることです。

  • 情報技術分野認定実習併用職業訓練

IT分野未経験者に対して実施する、OJTとOFF-JTを組み合わせて行われる訓練。

  • 長期教育訓練休暇等制度

働きながら訓練を受ける従業員に対して、休暇制度や時短勤務制度を導入した企業への助成。

  • 自発的職業能力開発訓練

従業員が自発的に受講した訓練を支援する企業への助成。

  • 定額制訓練

定額制のサブスクリプション型訓練に対する助成。

いずれもeラーニングに利用できますが、特に定額制訓練は活用しやすい助成と言えるでしょう。定額制訓練の経費助成率は、中小企業が45%、大企業が30%です。(賃金要件、資格等手当要件を満たした場合、それぞれ15%上乗せ)基本料金の他、初期設定費用やアカウント料などのオプション経費も支給対象となります。また、入社時・昇給時に実施される訓練や、これからの業務で必要になる訓練についても申請可能です。
訓練の要件は、①定額制サービスによる訓練であること、②労働時間に実施される訓練であること、③OFF-JTであること、④事業外訓練であること、⑤職務関連教育訓練であること、⑥一人当たりの受講時間数の合計が10時間以上であることです。なお、受講時間数は、実際にかかった時間ではなく、受講案内などであらかじめ定められている標準学習時間で計算することに注意が必要です。

参考:厚生労働省「令和6年度版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版」

(3) 事業展開等リスキング支援コース

事業展開等リスキング支援コースは、令和4年〜8年度の期間限定助成です。新規事業などの事業展開やDXなどに伴い、新たな分野で必要となる知識・技能を習得させるための訓練を行う際に利用できます。

主な支給要件は、OFF-JTによる訓練であること、実訓練時間数が10時間以上であることです。
対象となる訓練は、①事業展開に伴い、新たな分野で必要となる専門的な知識・技能を習得させるための訓練、②事業展開は行わないが、DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に、これに関連する業務へ従事させる際に必要となる専門的な知識・技能を習得させるための訓練です。いずれかに当てはまる場合は支給対象となります。
eラーニングの場合、最大75%を上限に経費助成が行われます。また、育児休業中の従業員が自発的に受講を希望した場合も助成対象となります。

参考:厚生労働省「令和6年度版パンフレット(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版」

事業外スキルアップ助成金

事業外スキルアップ助成金は、公益財団法人東京しごと財団が運営する、東京都独自の助成金です。都内の中小企業などが従業員に対して実施した研修の経費を助成するもので、eラーニングも助成対象となります。

申請要件は、都内に本社または事業所の登記があること、都税の未納付がないこと、過去5年間に法令違反等がないことなどがあります。また、助成対象となる研修要件は、教育機関が実施する研修であること、受講者の職務に必要となる知識や技能の習得と向上を目指す研修であること、あるいは専門的な資格取得を目指す研修であることなどがあります。助成額は、小規模企業者が助成対象経費の3分の2、その他の中小企業等が助成対象経費の2分の1で、上限額は1人1研修あたり2万5千円、1申請企業等あたり150万円です。

参考:公益財団法人東京しごと財団「事業外スキルアップ助成金」

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業庁の監督のもと、中小企業・小規模事業者などの業務効率化やDX推進のためのITツール(ソフトウェア、サービスなど)の導入を支援する補助金です。以下の5つの枠があります。

① 通常枠
② インボイス枠(インボイス対応類型)
③ インボイス枠(電子取引類型)
④ セキュリティ対策推進枠
⑤ 複数社連携IT導入枠

この中で、eラーニングが対象となるのは①通常枠です。まず、申請者は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」が提供する商品・サービスから、自社に必要なITツールを選択します。IT導入支援事業者以外の事業者が提供するITツールの場合は、支給対象になりません。その後、IT導入支援事業者と連携し交付申請書を作成します。事務局などによる審査を受け、採否決定後に交付が決定されます。事業を実施した後は、IT導入支援事業者と共同で「事業実施効果報告」を作成し、事務局へ提出します。

通常枠の補助率は、導入経費の2分の1以内です。顧客対応・販売支援、会計・財務・経営、総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システムなど計7つのプロセスから1種類以上のプロセスを申請し、そのプロセス数の要件によって補助額が異なります。また、補助対象はソフトウェア購入費とオプション・役務提供の導入関連費です。

参考:IT導入補助金2024

eラーニングの活用

eラーニングには様々なメリットがあります。例えば、企業側は学習管理システムにより、受講者の学習進捗の管理や学習履歴の集計が一元管理できるため、研修の管理・運営工数の削減できます。また、集合研修をeラーニングに置き換えることで、集合研修を行う際にかかる会場費や移動費、準備時間などの削減も可能です。受講者側は時間や場所に捉われず、いつでもどこでも自分のペースで学習することができます。また、繰り返し受講することができるため、知識の定着を促進することも可能になります。

eラーニングは一度に全ての受講者が同じ教材で学習ができるため、講師によるばらつき等がなく、教育の質を均一に保つことができ、新入社員研修や管理職研修、コンプライアンス教育、セキュリティ教育、部門別教育、語学教育など、eラーニングで学習できる範囲は多岐に渡ります。

また、集合研修とeラーニングを組み合わせたブレンディッド・ラーニングという研修スタイルもあります。知識の習得はeラーニングで行い、受講者同士でのディスカッションや質疑応答は集合研修で行うという研修手法です。集合研修とeラーニングそれぞれにメリット・デメリットがありますが、集合研修とeラーニングを組み合わせることで学習効果を高めることができます。

まとめ

eラーニングの導入において重要なことは、自社の課題と目的を明確にすることです。誰を対象に、何をどこまで学習するのか、学習成果をどのように活かすのかを把握する必要があります。最適な補助金や助成金を利用しながら、効果的にeラーニングを活用しましょう。