【講演レポート】【特別講演】eポートフォリオ最前線

eラーニングアワード2018。講演レポートを続けます。

【特別講演】東京学芸大学 情報処理センター 教授 森本 康彦氏による「eポートフォリオ最前線」を聴講してまいりました。現場での実際のかかわり方。eポートフォリオのこれからの使い方。まだまだなじみの薄いeポートフォリオですが、これからの活用に期待できると感じました。

講演の中から、私が気になった内容について、感想を交えてレポートしていきます。

eポートフォリオとは

eポートフォリオというと、何やらすごい学術的なものをイメージする人もいるかもしれませんが(私は論文や研究成果のようなイメージでした)、「学び」や「仕事」「探求」を電磁的に記録したものすべてをeポートフォリオというのだそうです。学生で言うと、自分の学習の記録を電磁的に記録して振り返ることかできるようであれば、立派なeポートフォリオといえそうですね。

大学入試でも、eポートフォリオは注目されており、テストだけでなくeポートフォリオでも実力を測るようになってきているそうです。AO入試や推薦入試では、eポートフォリオが必要とされ、ただの暗記ではなく「粘り強く考えながら、振り返り取り組む」という、仕事にも通じる姿勢が求められています。

社会人の能力はテストで評価できない

また、社会人としての能力はテストで一律評価することが難しいという点も、eポートフォリオが注目される理由です。学びの気づきを振り返ることができ、電磁的に蓄積されたデータは分析にも使用しやすいことから、今後企業での業績評価にも取り入れられていくかもしれません。eポートフォリオの活用には、eラーニングや電磁的に記録しにくい対人でのコミュニケーション能力も密にかかわってくるでしょう。社会人の能力を判断するには、同僚や上司へのインタビュー形式も有効であるというお話もあり、eポートフォリオは単体ではなく、ほかの方法と融合させて使用していくものであると感じました。

AIだけではダメ、先生or指導者がAIをうまく使う

「AIだけではダメ」講演の中で非常に興味深かったのがこの言葉です。教育において、すべてをAI任せにすると、必ずうまくいかない部分が出てくるというのが現場の実態としてあるそうです。これはAIの能力がまだ人に追い付いていないことによるものなのかもしれない・・・、等と考えてしまう部分もありますが、ある意味「人間」としてはうれしい話かもしれません。

現状の現場で、AIを取り入れた指導をする際は、「生徒←先生←AIのデータ」のように、先生がAIをうまく活用する方が効果が上がりやすいそうです。教育において、人と人とのかかわりの部分は必要であり、AIは問題を反復して解くときや家庭学習の際に利用し、対人ではアクティブラーニングをメインにするとよいとのこと。アクティブラーニングは話し合いや議論を活発にするために、人の指導があるべき。こういった部分が、「AIだけではダメ」な要素なのです。

そして、これらの学習の軌跡をデータ化し、eポートフォリオとして「3者面談」や「入試」に活かすことができます。こうなると先生の役割は、これまでの「知識を与える存在」ではなく、アクティブラーニングをうまくファシリテートしていく指導者の方向にシフトしていくかもしれません。

eポートフォリオを利用した学習と進路指導など

eポートフォリオは学びの振り返りや気づきに非常に強い存在です。電磁的な記録は「検索」「データ化」がしやすく、進路指導の判断材料にも利用できます。うまくeポートフォリオを利用することで、データに基づいた進路指導が可能になるのです。

また、高校と大学の接続にeポートフォリオを利用することができます。そうすると、7年間一貫した学びを作ることができるので、よりレベルの高い探求や学びが可能になるそうです。

eポートフォリオの可能性はまだまだありそうで、活かし方も人次第。これからどんどん広がっていくことでしょう。