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【講演レポート】【eポートフォリオトラック】 eポートフォリオで高大接続改革はどう変わるか?どう変えるか?

 11月14日から16日にかけて開催されていたeラーニングアワード2018フォーラムにて、15日に講演されていた「【eポートフォリオトラック】eポートフォリオで高大接続改革はどう変わるか?どう変えるか?」を聴講してまいりました。レポートを以下に上げます。eポートフォリオの導入に携わっている 3 名の先生がそれぞれの立場からeポートフォリオに関して講演を行ったうえで、パネルディスカッションをするという企画で、eポートフォリオの実例などを聞くことができました。

eポートフォリオとは

 講演の内容に入る前に、eポートフォリオに関して、若干の説明をしておきます。
 eポートフォリオ(E-portfolio)とは、ユーザーが、当人の手によって、自身にまつわる証明となるようなデータを集積しておくために設けられたインターネット上(厳密には、そうとは限りませんが)の領域のことです。データとしては、例えば、文書、ファイル、画像、ブログ記事やリンク等があげられます。
 eポートフォリオは、ユーザーのキャリア、能力等の証明となると同時に、ユーザーが自分自身を表現するための場でもあります。つまり、ユーザーは、日々自分の身のまわりで起こった事柄をeポートフォリオに集めることで、その時その時のユーザーのあり様の裏付けを作ることができるのです。

教育において(eポートフォリオの活用)

 こと、教育においては、これらのデータを、そのユーザーの学習記録として用いることを目的としています。教師はeポートフォリオを通じて、自身の生徒がどのような学習を行っているかを紙ベースのデータに較べて、手軽に、何度でも見返すことができる一方で、生徒は自分自身の学習の記録をいつでも思い返すことができるのです。さらに、自分自身の証明を作るといった観点でeポートフォリオの充実に取り組むことで、より自主的に、より自立した存在になることが期待されています。
 くわえて、やがてその生徒が進むことになる、更なる教育施設や企業が、そのeポートフォリオをもとに生徒を評価し、紙のデータやペーパーテストに基づいて判断するよりもより多面的な評価をくだすことができるようになります。現在でも、強く推進しているところはあり、例えばミシガン州では、eポートフォリオを提出するだけで、取得できるMCOATTという資格があります*。
*MCOATT e-portfolio

【eポートフォリオトラック】それぞれの講演の内容

 上記を前提としたうえで、日本で行われる教育改革および入試改革において、eポートフォリオが携えている可能性について、高校の立場、大学の立場、大学入試の立場という 3 つの視点から議論するというのが講演の要旨でした。

高校の立場から

 eポートフォリオをいち早く導入した清教学園中・高等学校で、その中心となって活動している田邊則彦先生が代表として登壇されました。
 具体的な使用方法等は、実際に授業を見に来てほしいの一点張りでしたが、eポートフォリオを教育に導入する際のいろはとしては、
  •  eポートフォリオはあくまでもツールであって、高校ごとに高校に即した形の活用方法を見出してゆくしかないが、清教学園中・高等学校のように先に導入して、数々の失敗をした経験を共有することができるので、あまり恐れないで導入してほしい。
としたうえで、
  •  eポートフォリオを導入する際、一番活用することになるのは紛れもなく生徒であって、一番苦労するもの彼らであるから、教師としては、自分たちの心配などしなくてよい。
と話をまとめていました。

【eポートフォリオトラック】大学の立場から

 3 大学でeポートフォリオのシステム作りに携わった得永義則先生が、過去にどのようなシステムを作ってきたかについて講演されました。単純にシステムの紹介で終わっていたうえ、大学におけるeポートフォリオは、やはり学生がどう用いるかという方向に向きづけられていて、高校や大学入試と結びつけるという考えにはあまり至っていないという印象でした。

大学入試の立場から

 文科省が進める、大学入試改革の委託事業において、その代表を務めていながら、Japan e-Portfolio というポータルサイトの運営にも携わっている尾木義久先生が、eポートフォリオが大学入試にどのような恩恵をもたらすことを期待しているかをお話しになられました。
 「現状の入試による席次は、大学に入ったあとの学習評価(GPAのScore)とは比例しない」ということを教鞭を執っている関西学院大学の実データで紹介したうえで、
  •  これから先、一般入試で学生を見定める時代が終わり、アジアを除く世界的で標準化されているように、大学ごとに多角的な選考基準を用いるよう変わっていく。その際、eポートフォリオがそれを推し進める助けになるだろう。
と予見されてました。
 また、
  •  eポートフォリオを大学入試に用いる際は、どうしてもそのシステム的に、高校が先導して導入を進める必要がある。
として、話を結ばれました。

パネルディスカッション

 森本康彦先生という東京学芸大学の先生がモデレーターとなり、会場から募集した質問も交えて 3 名、それぞれの立場でのパネルディスカッションを行うという趣旨でした。
 実際的には、みなことなかれ主義的で、目下のところ抱えられている、三者のどこから先行してシステムを導入し、どのような形で推進するかといったようなことなどの問題について、議論を戦わせるという心づもりではないようでした。
 結局のところ、「難しいねえ」という形で意見が合致していました。

所感

 パネルディスカッションのモデレーターを務めた森本先生が 3 名の先生方を招いて進められた講演でしたが、森本先生の考えていた、3 つの立場からeポートフォリオを見つめ、問題点や利点を議論するという形には進まず、それぞれが話したいことを話し、共感を得るという形に陥ってしまっていたのが私的には残念でした。
 とくに高校の立場である先生は、生徒がどのような問題を抱えうるかについて焦点を当てることでeポートフォリオ推進に対して否定的な立場を取ることができたでしょうし、大学の立場としては、学習適性のある学生を選抜するための立派な材料の入手という点で明らかに肯定的な立場を取ることができたと思います。結局のところ、大学も、大学入試改革委員も、厄介ごとを高校に押し付けるスタンスを取っているので、その部分で意見がぶつからないと実のあるものは生まれないでしょう。
 また、大学の立場として講演を行った得永先生が、学生にeポートフォリオ導入のいかんを問うたことがあったようですが、全体として否定的な意見が多かったと少しだけお話しされていました。
 つい最近まで高校生だった彼らが、自分自身を売り込むことに、より自発的で積極的な努力を強いられることに強い反発を覚えるのは当然で、やはり高校教員はその立場を守るために積極的に反発していかないと、彼らの存在の意味がないのではないでしょうか。